Seeing Voices 舞台覚書① @BPS3
2017/12/19 舞台 BPS3, Seeing Voices
手話を題材にしたマイケルの未発表曲。「Seeing Voices」
自身のイベントBluetree Private Show Vol.3(BPS3)にて舞台化する機会を頂きました。
その時のストーリーを文章にしてみました。
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ある日、ウォールナットグローブという小さな町に引っ越してきた一家がいました。
その一家の娘である少女ローラは引っ越した当日に近くの草原に花摘みに行きました。
そこで偶然池のほとりで石投げをしていた学校帰りの少年ビリーに出会います。
ローラは数回声を掛けましたが気付いてもらえません。
ローラは後ろから彼の肩を叩くと、ビリーはとてもびっくりしてローラを見ました。
彼は…耳が聴こえないのです。
その事を知り、驚くローラにビリーは気に止める事もなくまた石投げを始めます。
初めは驚いていましたが、ビリーに興味を持ったローラは花を摘んでいたバケットを置いて、ビリーと一緒に石投げを始めます。
そんなローラにビリーも少しづつ興味を持ち始めます。
しばらく二人で石投げをしていましたが、やがてビリーは持っていたリンゴをポーチから取り出すと、
ローラに差し出します。ローラはとても喜びました。
ビリーはもう1つリンゴを取り出して、食べようとしましたが、しばらく見つめてから
はっと何かを思い立ちます。ビリーはローラの持っているリンゴを指さすと、手で何かを表現しようとします。
最初は意味が分からなかったローラでしたが、やがてビリーのしている事を理解します。
ビリーは耳が聴こえない人のための言葉、「手話」で「りんご」を伝えようとしていたのです。
ビリーの手話に興味を持ったローラは花や、木にも手話で何というのかを尋ねます。
こうして二人は仲良しになり、ビリーは手話をローラに教えるようになりました。3カ月もすると、二人は手話で自由に会話をするようになっていました。
そんなある日。ローラはずっと聞きたかった事をビリーに手話で尋ねます。
「耳が聴こえなくて不自由じゃない?」
「ううん、家族が僕のために手話を覚えてくれたんだ。だからちっとも不自由じゃないんだ。」
「素敵な家族ね。」
「良かったら今度の週末、僕の家に夕食を食べに来ない?」
「喜んで!」
二人はとりとめもなく夢中でおしゃべりをしていました。そう。声の無い、音のないおしゃべりです。
気が付くと空にはきれいな夜空が広がってきました。
「お星さま!」
「きれいだね」
ビリーはすっかり遅くなってしまった事に気付き、
そっとローラの手を取ると、帰宅の途に着くのでした。
翌朝、ビリーが学校から帰ると、母親のキャロラインに、長男のアルバート、母の姉のメアリー、従兄弟のアルマンゾもいました。皆ビリーのために手話を覚えています。
ビリーはそこで意を決して母親にお願いをします。
「母さん、お願いがあるんだけど」
「何かしら?」
「今度、週末の夕食に友達を誘っていい?」
「もちろんよ。誰かしら?」
「ローラの家族さ」
そう言って照れ臭そうに部屋に向かうビリー。
初めて出来たガールフレンド。嬉しそうなビリーの姿に家族も嬉しそうです。
その様子をそっと見守る存在がありました。そう。曇りのない子供にだけ存在を感じることが出来るという純真な妖精です。
妖精は一生懸命手話で会話をする二人を心から慈しみ、歌を歌うのでした。
Seeing Voices
歌いたいんだ
君が知るもの見るもの
全ての事をね
動く手や表情
目でなく、耳が描く
心の中をね
君のその手は
まるで空間を編んでいるかのように
話すんだね。
音のないおしゃべり
互いに向き合い
解き放たれた手
空間を編んでいるかのよう
その手の動きは
声を見ているみたいだ
声たちを…
僕には君たちが
とても不自由に見えるけど
君らにとってはそんなこと
ないみたいだ。
君の手はまるで
話し、問いかけ
選び綴っているようだね
その手はまるで
声を見ているみたいだ
声たちを 声たちを…